Gemmy





























うわ,またカメラ向けとるわ。












とはゆうても,












一応客やし,












ほいなっ












たまにはサービスしたろか。












ほれ,写してみぃ。












たまには,別嬪さんやくらいゆーてみ。












あかん,慣れんサービスしたから












痒なってもおたわ。












面倒な客の相手は疲れるなあ。












なんて?別嬪やて?












今頃遅いわ。












にしても,このけったいな客,












いつまで写真屋でカメラ振り回す気やねんな。















2004年8・9月撮影 Aug., and Sep. 2004.
大阪府吹田市カメラの大学堂
At Camera Shop Daigakudo, Suita City, Osaka Pref.
minolta XD, MC Rokkor 55mm F1.7,
Konica PAN 100, F1.7 or F2.8 AE


 ハー・ネーム・イズ・ジェミー。彼女はいつもお世話になっている(より正しくは「迷惑をかけている」)某カメラ店の猫のうちの一匹。見ての通り,相当な美人である。いや,美猫である。

 この人(猫)がなかなか撮らせてくれない。ご店主以外に対して愛想という概念は持ち合わせていないように感じる。たまに,高さ3mはあろうかと思われる店の正面の飾り棚のてっぺんに寝そべっていて,下界の人間を高みの見物している。稀に下りてきて,それらしい素振りでこちらに近づいてきたりすることがある。しかし,私の「ジェミーちゃん♪」とのかけ声虚しく,焦らすだけ焦らして去っていく。表現するなら,映画やドラマで見るような,お店で声をかけるオッサン達を軽くいなしてすぐ引っ込んでしまう看板娘といったところか。

 ところが,ジェミーちゃん,どう気が変わったのか,この時に限って急に下りてきて,これもまたテレビドラマで見るようなモデル撮影大会のような静止状態を保ったりしている。このタイミングを逃したら一生撮れぬと,こちらも必死でノーフラッシュで,絞り開放かそれに近い絞り値でシャッターを切る。

 幸いだったのは,カメラに標準レンズが装着されていたことと,私にとって一番使いやすいMFカメラで,かつモノクロフィルムが入っていたことである。しかし,夕刻の店内で感度100のフィルムでは,油断すると手ぶれてしまう。しかも,絞り開放では被写界深度が極めて浅いため,わずかのピントのズレが命取りとなる。ジェミーの動きに合わせつつ,前後して構図を取りながら,ただひたすら手前側の目にフォーカシングしていく。

 ご店主が焼き増ししている間の少しの時間に一気に20枚余を撮り終えた。フィルムを巻き戻していると,ジェミーがさらにイカしたポーズを取る。しかし,悔しいことにこんな時に限って予備フィルムはない。彼女が次々と決めるポーズに砂を噛む思いをしつつ,この人(猫)はわかってやっているんだろうなと邪推する。

 巻き戻したフィルムの現像を依頼して店を出てふと思った。そこはカメラ店,フィルムを買えばよかったのだと。


2004年9月3日初版
2004年9月5日雑文増補