研 究 概 要

99/2/2現在


1)広告活動に関する研究

 阪神・淡路大震災後の広告活動に関する研究では,大学関係者,広告会社などに所属する研究者で研究組織を編成し,秋山は主に,震災直後1カ月間の新聞・TVの広告出稿に関する調査を行った(論文7,11).ここでは,広告出稿量の継時的変化を検討し,テレビにおいて単に広告を自粛するだけで広告による有効な情報提供がほとんどなされなかったという問題点を指摘するとともに,ガス・電気・鉄道といった公共的な役割を担う企業・団体は緊急時の現状を広告も利用し積極的に情報提供を行う必要があることを指摘した.震災などの緊急時における広告スペースの利用の在り方について述べた.また,広告活動とは異なるが,筑波大学の松井豊らとともに阪神・淡路大震災での避難所リーダーに関する研究を行い,避難所の構成要件と避難所リーダーの活動との関連を検討した(論文5).

 比較広告に関する研究では,比較広告の訴求型式,広告主(ブランド)の市場での位置づけ,当該商品への関与水準といった消費者の個人差要因,広告効果の測定法という5つの観点からそれまでの比較広告に関わる内外の研究を整理した(論文12).また,比較広告の訴求型式が異なることによる広告主や当該ブランドへのイメージの変容を検討するとともに,このイメージの変容に対して当該商品への消費者の関与水準が及ぼす影響を明らかにした(論文13,17,18,19,20).

 上記以外では,企業でのブランド戦略の一環としての,ブランド拡張における弊害を消費者が当該ブランドに抱くイメージの変容から明らかにした研究(論文10)や,通信販売における広告の情報提供機能に関する研究がある.通信販売に関する研究では,通信販売の利用実態調査を行うとともに(論文4,8,9),今後の非対面販売で重要になる電子カタログにおけるユーザーインタフェイスの設計に関する研究を行った(論文6).この電子カタログに関する研究は,次節で述べる購買意思決定に関する研究を応用を目指している.


2)購買意思決定過程に関する研究

 購買意思決定過程に関する研究では,情報モニタリング法(monitoring information acquisition)と呼ばれる情報探索行動を追跡する技法などを用い,一人の消費者が行う意思決定過程を検討した.論文14,16では,意思決定者の感情状態と,決定課題遂行への動機づけの高低が情報探索行動に及ぼす影響を検討し,不快感情の喚起に伴う情報探索行動の変化が課題への動機づけの高低により異なることを明らかにした.

 次に,修士論文,論文15などでは,決定課題の特性,特に,情報探索数の制限及び選択肢情報に一部欠損が存在する決定課題での情報探索行動を検討した.欠損情報を含む選択肢は,情報探索過程の初期から検討対象から排除される可能性を指摘するとともに,欠損している情報を消費者側の知識で補う場合には前述の傾向は見られないが,自らの決定に後悔している傾向がみられた.上述以外では,実際の小売店舗内での購買行動を面接調査などから検討し,商品購入への迷いが生じると商品を購入しない傾向を明らかにした(学会発表8-10,12-14).


3)協調的意思決定過程に関する研究

 上述の研究では個人での購買意思決定過程に着目してきた.ところが,家族での購買行動などを考えると,個人での意思決定のように見える場合もあるが,実際には情報探索過程や商品などを利用する段階で複数の人々が関与していることが多い(著書3).そこで,友人同士での協調的な意思決定過程に焦点をあて,情報探索行動及び選択肢情報の保持などから検討を行っている.この協調的意思決定過程に関しては,協調作業のための知識をメンバー間でいかに共有するかという問題にも着目し,協調作業過程と知識の共有化との間の関連性を明らかにすることも目指している.

 この研究は,平成6,8,10年度の文部省科学研究費補助金より助成を受け,2者による協調的な意思決定過程と,個人によるそれとの差異を情報モニタリング法を用いて検討している.論文1は,平成8年度までの研究を整理したものであり,ペアが単一の情報探索装置を用いる場合の意思決定過程と,個人によるそれとを比較している.結果として,ペアでの意思決定過程では,より多種の属性を検討する傾向が伺え,その結果下した決定に対して確信を抱くと共に,選んだ選択肢の情報のみがよく思い出されることが明らかになった.特に,最後の選択肢情報の保持に関する結果は,二人とも思い出せた情報になると,選んだ選択肢のみが想起されるという結果が強調されることが明らかになった.これらの結果は,ペア間での情報共有の難しさを示唆している.

 協調的意思決定過程に関する研究は,コンピュータによる協調作業支援に関する研究の中でも,特に,集団内での合意形成に至る情報探索過程を支援するコンピュータ・ネットワーク環境を構築するための基礎的研究として位置づけることができる.このため,今後の研究では,CSCWやグループウェア開発の研究との接点を求めていきたい.


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