センターのご紹介 大学院の教育・研究機関としてのカウンセリングセンター

神戸学院大学 心理臨床カウンセリングセンター 石﨑 淳一

 当センターは、2007年10月、2008年4月の大学院人間文化学研究科心理学専攻の開設に先立ってオープンいたしました。心理学専攻の臨床心理学系は、日本臨床心理士資格認定協会の定める基準にしたがって臨床心理士を養成する大学院のコース(第1種の指定校)として認められています。当センターはその附設の実習機関として臨床心理士を中心とする教員・スタッフによって運営され、地域の方々の心理相談に応じるとともに臨床心理士を目指す大学院生の実習訓練を行っています。2010年3月に第1期生を送り出し、すでに約30名が臨床心理士の有資格者として各方面で活躍しています。修士を終えてから、さらに高度な臨床・研究の研鑽を積むために本学の博士課程に進学された人も3名います。なお、本学における心理学を専攻できる講座の歴史はもっと長いのですが、ここでは指定校としての状況だけをご紹介しております。

 さて、現在の臨床心理学的な心理相談の歴史は、19世紀の米国に辿ると言われます。この1世紀以上の間、フロイト、ユング、ワトソン、スキナー、ウォルピ、バンデューラ、アイゼンク、ロジャーズ、ジェンドリン、ベック、エリス、エリクソン、ベイトソン、河合隼雄、セリグマン、その他、世界中の多くの臨床家、研究者がその歴史を発展させてきました。また、この間、膨大な数の心理検査が開発され、心理検査は心理相談を強力に支える道具となっています。

 また、心理相談の方法は、精神分析学や学習心理学、人間性心理学、認知心理学などを基盤にさまざまな技法が使用されてきました。その対象も個人との一対一面接を基本としながらも、家族療法やグループ療法、さらにはコミュニティ援助など、多様な対象に対する援助方法が開発されてきました。現在は、これまでの歴史的な多くの蓄積を整理、統合して、代表的な精神病理に効果的な心理援助が行えるように科学的な検証を行うことが推進されています。その一方で、病理的な側面だけではなく人間性のポジティブな側面を支援する研究も発展しています。複雑な現代社会の心理的な問題に対応するために、臨床心理学はなお一層拡大していっていると言えるでしょう。

 もちろん心の世界は複雑であり、簡単に割り切って理解することはできません。いくら複雑なテストを発展させても心の全てを理解できるものではありません。しかし一方、臨床心理学が明らかにしてきた多くの知見は実際に役に立たせることができるものです。また、心理的援助において他者の存在が決定的に重要であることは確かでしょう。第三者に相談することで、新しい視点が開けてくることがあるでしょう。その点で、臨床心理学が積み重ねてきた成果を参考にしながら、クライエントの皆様の問題を一緒に考えていくことで、「少しでもお役に立てることがあれば」という希望を持って当センターは活動しております。


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